悪人は一人も出てこない小説
2020/05/13
「本当の武士」とは?
浅田次郎作の「流人道中記」にはまっています。元々は新聞小説ですが、ドップリはまってしまいました。
時代は江戸末期。黒船来航や桜田門外の変など、太平の世が文明開化に進む頃。
時代劇ドラマで、青山玄蕃といえば大身だがやりたい放題の旗本で、お家取り潰しにあった極悪非道の人物と言われているが、実際はそうじゃないんだよと作者は言いたいらしい。
なにしろ、悪人が出てこない。
流人になった青山玄蕃を青森まで送り届ける役目の若い見習い与力が主人公で、青山玄蕃の人間的魅力を引き出してくれる。
上巻は面白くてあっという間に読みましたが、下巻はなかなか進みません。読み終えてしまった後のことを考えると、なんだか怖いのです。青山玄蕃と別れたくない、いつまでも一緒に旅をしていたいと思えてきます。
悪人は一人も出てこないですが、自分の欲や体面ばかりが気になる人は始末が悪いと今更ながら思います。
「本当の武士」とはどんな人か。あと少し頑張って読み進めたいと思っています。