疼くことは生きること⁉
2021/08/24
「疼くひと」を読んで
「疼くひと」のヒロインが羨ましいと書きましたが、違和感が二つ。
①タイトルの「疼く」という言葉につながる状態が書いてない。
②ヒロインが料理するシーンがやたら多いが、これは何を意味するか。
「疼く」を調べると、「ずきずき傷が痛むさま」とありますが、読んでみて実際の傷も心の傷も書いてなかったです。
料理するシーンは、何が食べたいかに始まって市場で新鮮な食材を求め、下ごしらえから焼いたり炊いたり事細かにその状況を書いています。
いろいろ想像を膨らませて「疼く」という言葉のイメージを広げてみました。
体のどこかに「疼いている」ものがあるとしたら、どこか深いところに脈々と昏々と湧き出るようなものがあるとしたら……。
それを表現するために料理というシーンが必要だったのかも。
毎日毎日自分のために食材を求め、作り、食べる。
作者は映画監督だから、もし映画にするのなら料理シーンは当たり前のように出てくるのでしょうし、ヒロインは相手の男を台所で迎え入れると書いています。
ヒロインはどこにでもいる普通の人だと言いたいのだと思います。
この「疼く」ものこそが生きるエネルギーだと思います。
「生きる」とは何も特別なことではなくて、毎日自然にやっていることなんだよと作者は言いたいのでしょう。
以前に、読後「なんだか生きていく勇気が湧いてきた」と書きましたが、そういうことだったのかと納得しました。